활옷ファロからわかる、韓国の格差

2018年11月7日

東京池袋で開催されたキルト&ステッチショーで、からむし工房のチェヤンスク先生のコレクションが展示されていたんですね。
花嫁衣裳です。写真も載せておきますね。
私も花嫁衣裳をコレクションしていて作ってもらうのに50万円ぐらいの費用が掛かりましたが再現もので新品です。
この2点を比べると相当な差があります。これこそが韓国の格差です。

私の持っているものは再現が簡単です。
宮中で使われていたものは国宝なので展示物としても目にするし、研究している先生も多いので資料もある。
刺繍や針繕を習っている人はほとんどが宮中レベルのものをやっているので、技術は習得している再現しようと思えばできるだけの腕前がある人が何人もいます。お金があったら手に入るレプリカものです。大したコレクションじゃありません。

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展示されていた花嫁衣裳、활옷ファロといいます。花嫁が着る衣装は何種類もあって 원삼(圓衫)というのも花嫁衣裳です。
花嫁衣装については、またお話しできる機会もあるでしょうから一旦おわって。
チェ先生のコレクションのファロは、たぶん田舎のとある村か町かわかりませんが、そこが所有していたものではないかと思うんです。
技術的に美しい刺繍が刺されているかというとそういうものではなく、ちょっとアバウトででもちゃんとした花嫁衣裳の姿で、立派な刺繍がされています。
大変価値のあるコレクションです。
というのもリアルだからです。

花嫁衣装は宮中のお姫様しか着れない物なのですが、庶民にも一生に一度だけ結婚の時に花嫁衣装활옷ファロを着るのを許されていたので、
村単位で購入して、村の者が結婚するときにレンタルして(無料ですよ、その時代は)共有して着ていたらしいです。
着まわしていたともいえるかもしれないです。
韓国の味研究所で手伝いに来てくれていたアジュマの話なんですが、
そのアジュマは現在60代ぐらいでしょうね。
40年以上前に村の集会所みたいなところで結婚式を挙げたってことで、こんな衣装を着たって활옷ファロを指さしてたんですね。
すごいやないですか!!(もちろん韓国語で)って言ったら、汚かったわって、それにサイズが合ってなかったとかお話してくれて。

素敵なことだと思うんですよ。小さな集団の共存共栄の生活ぶりがあって。
村のみんなで祝ってくれていたってことも結婚が普通のことじゃなく、イベントだったってことも。
そして、庶民の生活ぶりの貧しさも感じるのです。

宮中にあるものと庶民が持つ者の格差が、활옷ファロ一つとっても すごいでしょう。
また宮中以外は絶対に、使わせてはいけない物と色もあって、あんたらには持たせへんで~~~使わせへんで~~~って定められているんですよ。
富に対する憎しみを庶民が持っているっていうのは、韓国ニュースを見ても感じるので、こういった歴史的な格差から生じた感情なのではないかと思えるんです。そこは想像です。

さて、刺繍に焦点を当ててみていただくと、民間のものと宮中のものの差が歴然なのはわかりますよね。
ただ、材料と刺す人間の技術の差ですよね。刺繍の分量も違うし、図案も違う。
でもただそれだけです。
宮中に上がるのは、大体小学生ぐらいの年齢です。刺繍班と、針縫班(文献上の名称ではありません、簡単に説明するために書いただけです)があってどちらも宮中での女性の地位が高い仕事です。
宮中に上がって15年たってやっと内院として認められ、これは社員として認められた、入社するまでに15年かかったと考えてもらったら想像つくと思います。そして宮中に上がってから35年(内院になってから20年)たってサングン尚宮になり地位が与えられたらしいです。
嫁にも行かず35年間宮中にいたんですから、位ぐらい高くならないと報われないですよね。
毎日毎日刺繍さして、修行を積んだ方たちが刺したものですから、やっぱり素晴らしいですよね。
才能もやっぱりあると思いますが、結局忍耐強く続けた物が残ったてことですよね。

拝見していろいろと思うことができました。
こういった庶民の生活感が染み出ている骨董をご覧になってただ見ただけではもったいないので、書かせていただきました。
こういったものを収集しているってことが素晴らしいです。
庶民の生活が垣間見られますもの。